大枠の話
合意を検討する際の基本的な視点
- 重要なのは「民事」と「刑事」の責任両面に手当をする観点から「合意をする必要があるかどうか」を考えること
- 今回の和解基準改訂は、そこに大きな変化をもたらすものではないと考えられる
- 合意をすることで「表明保証」と「違約罰」が加わる点については要注意
今後の動向に注意
今後のITJ法律事務所の動きには要注意
ITJ法律事務所の手法を模倣している事務所にも、今後同様の動きがみられる可能性あり
表明保証とは?
表明保証の意義
「表明保証とは,一般的に契約当事者の一方が,他方当事者に対し,主として契約の対象物等の内容に関して,一定時点における一定の事項が真実かつ正確であることを表明し,保証することをいう。」
「表明保証の機能は,当事者間のリスクを分担することにある。すなわち,当事者が契約締結時において当事者が前提としていたものが崩れた場合に,そのリスクをどのように分担するかというものである」
引用元:阿部・井窪・片山法律事務所/編『契約書作成の実務と書式 第2版』(有斐閣、2019年)267頁
「表明保証とは,一般的に契約当事者の一方が,他方当事者に対し,主として契約の対象物等の内容に関して,一定時点における一定の事項が真実かつ正確であることを表明し,保証することをいう。」
「表明保証の機能は,当事者間のリスクを分担することにある。すなわち,当事者が契約締結時において当事者が前提としていたものが崩れた場合に,そのリスクをどのように分担するかというものである」
引用元:阿部・井窪・片山法律事務所/編『契約書作成の実務と書式 第2版』(有斐閣、2019年)267頁
M&Aにおける表明保証
「デュー・ディリジェンスは通常,比較的短期間にしかも対象会社の協力の得られる範囲で行うにすぎないため,買収者は,対象会社の提供する情報の真実性に確信を持てないことがままある。そこで,対象会社の主要株主等が,対象会社に関する一定の事項について買収者に提供した情報が真実かつ正確であることを表明・保証し,もしも当該条項の違反があれば,それによって買収者が被った損害を補償する旨を約すことが多い(このような契約条項を,表明・保証条項という)。」
引用元:田中亘 著『会社法 第4版』(東京大学出版会、2023年)643頁
「デュー・ディリジェンスは通常,比較的短期間にしかも対象会社の協力の得られる範囲で行うにすぎないため,買収者は,対象会社の提供する情報の真実性に確信を持てないことがままある。そこで,対象会社の主要株主等が,対象会社に関する一定の事項について買収者に提供した情報が真実かつ正確であることを表明・保証し,もしも当該条項の違反があれば,それによって買収者が被った損害を補償する旨を約すことが多い(このような契約条項を,表明・保証条項という)。」
引用元:田中亘 著『会社法 第4版』(東京大学出版会、2023年)643頁
反社会的勢力排除における表明保証
「反社会的勢力の排除条項とは、暴力団等の反社会的勢力が国民や企業ひいては社会経済に被害を与えその脅威となっていることに鑑み、企業が反社会的勢力との関係を断つために、契約の相手方に対して反社会的勢力でないことを表明保証させ、表明保証できない者とは契約せず、これを秘して契約を締結した者には、これが後日発覚したときに契約の解除ができること等を定める条項である。その要素は、①反社会的勢力の定義、②契約の両当事者又は一方当事者が反社会的勢力でないことの表明保証をすること、③この表明保証に違反した場合の効果、具体的には、違反をされた相手方は契約を解除することができ、かつ、違反した当事者に対する損害賠償責任を負わないこと、さらには、違反をされた相手方は違反した当事者に対して損害賠償請求(時として違約罰の定めがある。)ができることの三つである。」
引用元:滝川宜信・弁護士法人しょうぶ法律事務所 編著『業務委託契約書の作成と審査の実務〔全訂版〕』(民事法研究会、2022年)81頁
「反社会的勢力の排除条項とは、暴力団等の反社会的勢力が国民や企業ひいては社会経済に被害を与えその脅威となっていることに鑑み、企業が反社会的勢力との関係を断つために、契約の相手方に対して反社会的勢力でないことを表明保証させ、表明保証できない者とは契約せず、これを秘して契約を締結した者には、これが後日発覚したときに契約の解除ができること等を定める条項である。その要素は、①反社会的勢力の定義、②契約の両当事者又は一方当事者が反社会的勢力でないことの表明保証をすること、③この表明保証に違反した場合の効果、具体的には、違反をされた相手方は契約を解除することができ、かつ、違反した当事者に対する損害賠償責任を負わないこと、さらには、違反をされた相手方は違反した当事者に対して損害賠償請求(時として違約罰の定めがある。)ができることの三つである。」
引用元:滝川宜信・弁護士法人しょうぶ法律事務所 編著『業務委託契約書の作成と審査の実務〔全訂版〕』(民事法研究会、2022年)81頁
1
合意書作成前の検討
結論:現状では合意すべきではない
主な問題点
- 8万円という金額は裁判例の傾向からやや高め
- 口外禁止条項により、他の利用者との弁済が考慮されない状態に
- 権利者は弁済を受けても他の利用者に全額請求可能
- 刑事告訴は現状積極的に行われていない
表明保証条項の危険性
罰金が高額であり、他の作品の侵害について数量や内容を確認する手段がない以上、合意は危険です。
2
合意後・支払い前の対応
110万円の請求を受けた場合
権利者側は合意の存在を根拠に請求が可能(合意書による立証は簡単)
推奨される対応
公序良俗違反を根拠に支払いは全額拒絶すべき
※「合意を覚えていない」等の主張は無意味
新規発見分の作品についての個別和解も慎重に検討し、弁護士への相談を推奨
3
支払い済みの場合の返還請求
不当利得返還請求の方法
すでに110万円を支払った場合は、不当利得として返還を求める必要があります。
民法第703条(不当利得)
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。
民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
※表明保証条項部分のみを無効と主張すれば足りる(合意全体の無効主張は不要)
表明保証条項の問題点の詳細
権利者側の主張
申告件数を信頼して和解するため保証が必要
反論1
1件8万円は既に裁判例より高額。なぜ信頼が必要か不明
反論2
追加侵害が発見されても別途請求可能。権利は侵害されない
反論3
信頼が裏切られても実損害は発生しない
反論4
精神的に不安定な状態での合意。十分な理解は困難
📌 重要な結論
表明保証条項は権利者に一方的に有利な内容であり、
合意前は慎重に検討し、合意後も適切な法的対応が可能です。
専門家への相談を強く推奨します。
表明保証条項は権利者に一方的に有利な内容であり、
合意前は慎重に検討し、合意後も適切な法的対応が可能です。
専門家への相談を強く推奨します。