作 成 : 愛知県弁護士会所属弁護士 早河弘毅

朝日ネットから発信者情報開示にかかる意見照会書が届いた場合の対応について

目次

最後まで読むと分かること

  • 朝日ネットから意見照会書が届いてしまった方がとるべきアクションがわかる。
  • 朝日ネットが過去にかかわったトレント関係の裁判例についてわかる。
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弁護士早河弘毅

このランク付けは、読み手の便宜のために、私の判断で行っているものです。ご参考にしてください。

初心者向け記事のご案内

この記事は、ある程度ご学習が進んだ向けの記事です。あなたがもし、まだ右も左も分からないという場合は、以下の記事を先に読んでいただいた方が、全体像の理解に資すると思います。

初心者は、先に以下の記事を読むことをお勧めします。

朝日ネットから意見照会書が届いてしまった場合の対応について

 基本的にはほかのプロバイダとは変わりません。回答書をどのように返送するかが問題となります。
 以下ご説明していきます。
 なお、少々踏み込んだ内容ですので、上記でご紹介している記事を先にご覧いただいた方が良いかもしれません。

回答書の返送は1週間より遅れる場合には電話で連絡を入れるのが無難。

 令和6年10月16日現在、朝日ネットの意見照会書の最大の特色は、回答書を「本件照会書受領日から一週間程度以内で、添付「発信者情報開示 回答書」にてご回答いただきますよう、お願いいたします。」と記載があることです(下線と太字は私が付しました。)。

 通常は意見照会書受領から2週間以内が期限ですので、このような記載はほかのプロバイダではお見かけしないところです。

 一応、2週間の期間がスタンダードになっている経緯としては、一般社団テレコムサービス協会ガイドラインの以下の記述を踏まえているものです。

そのような事情の存在については、請求者の主張する事情に加え、発信者の主張も考慮した上で判断することとなるが、発信者に意見照会を行った場合において、一定期間(二週間)経過しても回答のない場合には、発信者はこの点に関して特段の主張は行わないものとして扱う。

https://www.telesa.or.jp/vc-files/consortium/provider_hguideline_20220831.pdf

 そうすると、2週間以内に返送すれば足り、「一週間程度」に「お願いします」とはプロバイダ側の事情でもありそうですが、遅れるようなら連絡しておくと良いでしょう。

 なお、プロバイダの中には担当窓口の電話番号を表記しない会社もありますが、幸い、朝日ネットは発信者情報開示にかかる意見照会書の1ページ目の上部に株式会社朝日ネット 個人情報保護対策室の電話番号があります。ここにかけると良いでしょう(担当ではない方が出ることもありますが、つないでいただくことができます。)。

無視するのではなく回答書を返送すべし

 この点は他のプロバイダと同じです。無視をするメリットはないので、回答書を返送しましょう。

「同意しない」(不同意・拒絶)回答の場合は、異議申し立てまで行っているケースがあるので参考にする

 後述する通り、朝日ネットは、比較的最近の事件でも、開示請求発信者情報開示命令申立の認容決定に対し、異議申し立てを行っていることが確認できています。

 異議申し立てがあっても、決定が覆る可能性そのものは低いのですが、開示されるまでの期間は伸びます。

 異議申し立てを行っているのは、直近ですと、令和6年8月8日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和5年(ワ)第70645号 発信者情報開示命令申立ての認容決定に対する異議事件(基本事件・東京地方裁判所令和5年(発チ)第10072号発信者情報開示命令申立事件)です。

「同意する」回答又は「同意しない」(不同意・拒絶)回答をすべきかについては、弁護士に相談すべし

 「同意する」回答又は「同意しない」(不同意・拒絶)回答をすべきかについては、他のプロバイダととくに変わるところはありません。

 IPアドレスの検出システムの問題点を指摘する場合には、IPアドレス検出手段についての、AVメーカー等の権利会社側の法律事務所のスタンスが問題になります。

 こちらについては、別記事もご参考にしてください。

参考記事

朝日ネットが過去にかかわった裁判例について

 プロバイダがかかわった発信者情報開示請求事件については、裁判所のサイトに一定程度記録が残っています(公開のサイトです。)。

 このサイトから検索を行うことで、公開の裁判例の存否・内容を確認することが可能です。

 令和6年10月16日現在、「トレント 朝日ネット」で検索を行ったところ、

  • 令和5(ワ)70645  発信者情報開示命令申立ての認容決定に対する異議事件  著作権  民事訴訟
    令和6年8月8日  東京地方裁判所
  • 令和3(ワ)27419  発信者情報開示請求事件  著作権  民事訴訟
    令和5年10月27日  東京地方裁判所
  • 令和2(ワ)1573  債務不存在確認請求事件  著作権  民事訴訟
    令和3年8月27日  東京地方裁判所

の3件が確認できました。上記のうち③については朝日ネットは当事者ではありません。

 ①および②はいずれも福本悟先生が代理人として活動なさっています。

令和6年10月16日に当職のPCで検索を行いました。

まとめ

 基本的な対応は他のプロバイダと変わりませんが、「1週間程度」と短い期間を切ってきていることはどうしても気になるものです。早めに弁護士にご相談ください。何卒宜しくお願い致します。

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この記事を書いた人

愛知県弁護士会所属弁護士(登録番号は60208)。
大学入学後半年間の学習で1年生の秋に行政書士合格。
愛知大学法学部卒。名古屋大学法科大学院卒。
弁護士登録後2年10か月で早期独立開業し、令和5年9月1日に「早河弘毅法律事務所」を創設。
創設後、持ち前の労働事件、刑事事件、インターネット事件の処理を中心に売り上げを堅調に伸ばし、令和6年4月に法人化、「弁護士法人早河弘毅法律事務所」の所長となる。
1991年12月23日生まれ。
依頼人に寄り添う弁護士、不安からお守りできる弁護士になりたいと思っているが、それは基礎となる法的素養が盤石であることが前提であって、単なる巧言令色を意味しない。早いレスポンスと丁寧な説明が売り。

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