作 成 : 愛知県弁護士会所属弁護士 早河弘毅

「同意する」回答書を出した後撤回可能なケースについて。

目次

最後まで読むと分かること

  • 「同意する」回答を出した後、撤回できるケースがあることがわかる。
  • 撤回をすべきか、撤回をする必要はないのかという点については、弁護士への相談が必要。
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本記事が関係する領域
意見書照会受領・回答
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訴訟・刑事告訴
弁護士早河弘毅

このランク付けは、読み手の便宜のために、私の判断で行っているものです。ご参考にしてください。

「同意する」回答書を出した後に撤回をすることは可能な場合があります。事例で勉強しましょう。

受領~返送まで

 例えば、令和X年の7月7日に意見照会書が届いたとしましょう。
 受け取ってから2週間以内に回答書を返送してほしいと書いてあることが多いと思います(プロバイダによっては1週間以内のところもあります。)。
 そうすると、あなたとしては「21日までには返事をしなくては」と思ったとします。
 ネットで調べると、同意しない回答をしても開示されることはほぼ間違いないという記載を読んだあなたは、急いで「同意する」に〇をして、返送をした。
 このような場合を想定します。

弁護士早河弘毅

本当なら、この返送をしてしまう前に私に相談してほしいです。とくに、発信者情報開示にかかる意見照会書の相談の中でも、申立がされているケースと、申立がされていないケースは完全に別物です。そこを区別していない先生が多いことに驚きます。

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返送後、撤回をしたいと思うようになる

 回答書を返送して3日が経ったと考えてみてください。
 あなたは、急いで出してしまったはいいけれど、やはり「同意しない」回答で出したほうが良かったのではないかと悩んでいました。

実は「同意しない」選択をすべきだったのではないか

 というのも、意見照会書を見直していると、そこに記載されているタイトルには全く見覚えがありません(プロバイダに返送する必要があるのは回答書だけですので、意見照会書は手元にあるわけです。)。
 トレントを使っていたことはあるのですが、作品には見覚えがありません。
 トレントでダウンロードした後はファイルをすぐ消すようにしていたので、何をダウンロードしたのかも今一つ覚えていません。
 ただ、その作品のことは本当に知らない気がします。
 やはり「同意しない」で出せばよかったのかもしれない。けれど、返信用封筒に入れて赤いポストに出してしまった意見照会書は、もうとっくに郵便局員がプロバイダの本社に送り届けた後でしょう。
 電話をかけてプロバイダに相談したほうが良いのでしょうか。
 それとも、そんなことをすれば印象は悪くなって不利になってしまうのでしょうか。
 あなたはずっと悩んでいます・・・・・。

このような問い合わせは珍しくありません

 実は、同じ悩みをもつ相談が複数寄せられています。
 当職としても、実際にお受けして、プロバイダに急遽連絡を行い、回答書を差し替えたことはあります。

差し替えはなるべく早くしよう

 撤回して差し替えることができるとしても、なるべく早くした方がよいので急ぎましょう。

申立までされている事件か、そうでないかで変わる

 まず、申立がされている事件の場合、プロバイダが回答書を証拠として出してしまっている場合でも、裁判所を利用した手続きは続いておりますので、撤回する余地はあると私は考えています。
 一度は急いで出したものの、冷静に考えた結果、やはり同意できないということはあり得るように思われます。
 とはいえ、当方で経験があるのは、証拠提出前に差し替えたケースのみで、現状、「同意する」回答書が証拠として提出されてしまったケースで撤回・差し替えを行ったことはまだありません。

 申立がされていないケースですと、同意する回答をした場合、プロバイダがすぐに開示してしまっている可能性もあります。大急ぎで対応しましょう。

電話窓口の無いプロバイダの場合はタイムリミットが縮減します

 ほとんどのプロバイダは電話窓口を用意しており、意見照会書の1ページ目をみれば、電話番号が載っているはずです。そこに電話をかけて、撤回と差し替えの旨をまず連絡します。
 他方で、ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社のように、電話番号を記載していないプロバイダもあります。力技で電話番号を探したとしても、意見照会を担当とする部署ではない連絡先ですので、相当時間がかかります。この場合は、可及的速やかに、速達で連絡文を送るしかありません。

弁護士早河弘毅

電話番号が書いてある場合でも、土日はつながらないのが普通です。

「同意する」回答と「同意しない」回答どちらが良いかについて

 あなたにトレントを使った覚えがない場合や、作品の覚えがない場合は、発信者情報開示請求の理由となっている権利侵害をしていないわけですから、「同意しない」回答で出すべきです。
 他方で、トレントを使った覚えがある場合、一番やってはいけないことは「トレントを使ったことはありません」などと虚偽の回答をすることです。このような行為に及ぶと、民事訴訟に移行した場合、証拠として回答を利用されてしまいます。また、刑事告訴された場合でも、悪質であると認定される可能性があります。

 「同意しない」回答については以下の記事で丁寧に説明していますので、ご入用であれば確認してください。

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この記事を書いた人

愛知県弁護士会所属弁護士(登録番号は60208)。
大学入学後半年間の学習で1年生の秋に行政書士合格。
愛知大学法学部卒。名古屋大学法科大学院卒。
弁護士登録後2年10か月で早期独立開業し、令和5年9月1日に「早河弘毅法律事務所」を創設。
創設後、持ち前の労働事件、刑事事件、インターネット事件の処理を中心に売り上げを堅調に伸ばし、令和6年4月に法人化、「弁護士法人早河弘毅法律事務所」の所長となる。
1991年12月23日生まれ。
依頼人に寄り添う弁護士、不安からお守りできる弁護士になりたいと思っているが、それは基礎となる法的素養が盤石であることが前提であって、単なる巧言令色を意味しない。早いレスポンスと丁寧な説明が売り。

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