スタッフブログ:「『同意しない』回答をしてもOKか?」

イントロダクション

本記事は、事務員さん(ニックネームサバゲ―好きさん)が、入社後1か月で学んだことをアウトプットしてくださった内容です。



事務員のサバゲー好きと申します。



ご参考になれば幸いです。



私のコメントも挟みながら進めていきます。
発信者情報開示にかかる意見照会書の回答書に同意しない回答(不同意回答・開示拒否回答)をしても良いのか?
事務員記載部分



私が思ったことを書きます。ちょっと正しいか自信がないので、先生教えていただけると助かります。
こんにちは!
本日はトレントについて学んでいく中で、発信者情報開示にかかる意見照会書の回答書に「同意しない」を書いても良いものなのか?ということについて学びました。
知らずとはいえ、トレントを使用したことには変わりがないため、「同意しない」で回答しては法律に違反したり、AVメーカー様に対して悪い印象を与えてしまうのではないだろうか?と思っていましたが、先生がおっしゃるにはそうではないとのことです。私としても、イメージとは違ったのですが、法律をきちんと勉強したことはないので、確証もありませんでした。先生と一緒に法律を見てみたところ、確かに、違法となる根拠はないと思うようになりました。


弁護士作成部分



サバ好きさんありがとうございます。
早河弘毅です。おっしゃるとおり、プロバイダ責任制限法6条1項は、次のとおり定めています。
(開示関係役務提供者の義務等)
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律 | e-Gov 法令検索
第六条 開示関係役務提供者は、前条第一項又は第二項の規定による開示の請求を受けたときは、当該開示の請求に係る侵害情報の発信者と連絡することができない場合その他特別の事情がある場合を除き、当該開示の請求に応じるかどうかについて当該発信者の意見(当該開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む。)を聴かなければならない。
意見聴取はプロバイダの義務であって、回答義務が発信者にあるわけではありません。条文から出発する癖をつけておいた方が良いです。なお、虚偽の回答が許されないことはもちろんです。
発信者情報開示に係る意見照会書?回答書?
「同意する」、「同意しない」?



この部分も、ご作成いただきありがとうございます。



一度、ご作成いただいたものをほぼそのまま掲載し、そのあと私からコメントをする体裁を取ります。



本記事は、読む場合は必ず最後まで読むようにしてください。
事務員作成部分
同意しない回答(不同意回答・開示拒否回答)をした場合の流れ



続いて、次のように思っていますが、先生、正しいでしょうか??
「発信者情報開示に係る意見照会書」とは、著作権を侵害したと訴えている会社、法律事務所に情報開示してもいいかどうかをプロバイダが聞いてきている書類です。
その情報開示に「同意する」のか「同意しないのか」を回答するのが「回答書」と呼ばれるものです。
そして、プロバイダが著作権を侵害したと訴えている会社、法律事務所に「同意する」「同意しない」の意見を伝えてくれるものである、と学びました。
「同意しない」回答だと、自分の住所、氏名などの個人情報を伝えるのを拒否していることをプロバイダから著作権を侵害したと訴えている会社、法律事務所に伝えてくれます。その場合は、「同意しない」理由を一緒にプロバイダに書く必要があります。(私たちは、その「同意しない」理由を論理的に分厚く作成して反論いたします。)
同意しない回答をして、相手側に印象が悪く思われないか。
僕自身、最初に「発信者情報開示に係る意見照会書」に「同意しない」回答で出すと説明を受けた時に、そんなことして権利侵害を訴えている会社や相手方法律事務所などから、印象が悪くなってより一層、IPアドレスを検索されたり、示談金を吊り上げられたりと悪い方に行くのではないか?と思っていました。
印象が悪くなることはない(というように私は解釈しました。間違っていたら先生ご指摘をお願いします。)
トレントの著者権侵害の事件上、あなた個人のみで訴えているわけでなく、様々な人に対して「発信者情報開示に係る意見照会書」を送っていると予想される。そのため、この人は「同意しない」「同意してる」と把握して対応を変えていることはないと思われます。
結論
- 「発信者情報開示に係る意見照会書」を「同意しない」で回答してもご依頼者様の立場が悪くなるという事は、今までないことが分かった。
- 「同意しない」ことによって、発信者情報開示を棄却できる可能性がある。



こんな感じで書いてみましたが、先生いかがでしょうか?入社一か月以内の、まだほぼ素人の私からすると、このようにとらえてしまいました。



私がお客さんに法律相談をしているわけではないので、極論私がこの点を正確に理解している必要まではないのかもしれませんが、もっと力をつけたいと思っています。ですので、間違っているところはご指摘いただけると助かります!!
早河コメント



ご作成誠にありがとうございました。



まず、スタッフブログの作成に一番協力的になってくださり、誠にありがとうございます!本当に助かっています!
発信者情報開示にかかる意見照会書の説明ありがとうございます。
発信者情報開示にかかる意見照会書は、プロバイダ責任制限法6条1項に基づき、プロバイダが発信者に同項の「意見」を確認するための書類です。
「同意しない回答」が相手方及び相手方法律事務所の「印象」を悪くすることはないということですが、この点は注意を要します。
まず、相手方サイドの「印象」は、結局他人を相手にしていることなので、我々からは分からないことです。また、普通に考えれば、印象が良くなるということはありません。
実際にも、誹謗中傷の案件などでは、「同意する」回答をして早々に謝ってしまった方が良いケースもあるでしょう。
しかしながら、プロバイダ責任制限法6条1項で求められている意見は、「当該開示の請求に応じるかどうかについて」の「当該発信者の意見」ですので、開示の請求に応じるか、応じないかという意向を確認されているにすぎません。同意をしなければ虚偽の述べているのと同じだ、ということではないのです(理由の欄に虚偽を記載することは許されませんが)。
>「発信者情報開示に係る意見照会書」とは、著作権を侵害したと訴えている会社、法律事務所に情報開示してもいいかどうかをプロバイダが聞いてきている書類です。
その情報開示に「同意する」のか「同意しないのか」を回答するのが「回答書」と呼ばれるものです。
そして、プロバイダが著作権を侵害したと訴えている会社、法律事務所に「同意する」「同意しない」の意見を伝えてくれるものである、と学びました。
この箇所についてですが、「発信者」という主語を積極的に使いつつ、行為の主体と客体を意識して文章を整理していくと読みやすくなっていきます。法律事務所は代理人にすぎず、当事者なので、記載は省いた方が端的に行けると思います。また、会社のこともありますから、正しいとは思いますが、個人が請求者になることもありますので、たとえば・・・・
「発信者情報開示にかかる意見照会書」とは、プロバイダが、発信者に対し、発信者情報の開示に応じるか応じないかの意見を問い合わせる書面です。この意見を回答するために「回答書」が同封されています。
という説明が良いと思います。
>僕自身、最初に「発信者情報開示に係る意見照会書」に「同意しない」回答で出すと説明を受けた時に、そんなことして権利侵害を訴えている会社や相手方法律事務所などから、印象が悪くなってより一層、IPアドレスを検索されたり、示談金を吊り上げられたりと悪い方に行くのではないか?と思っていました。
ありがとうございます。IPアドレス×タイムスタンプの組み合わせが分かっていても、個々の発信者の氏名住所がそこから直ちに分かるわけではないので、個人を集中して検出するということは技術的にはできないのです。
示談金を吊り上げられるのではなかという点については、今後も将来にわたって必ずそういったことがないとは申し上げることはできません。ただし、多くの場合、権利者側の提案は、いずれの回答の場合でも同じ金額であるのが現状です。
立場が良くなる、悪くなるという言葉は相当難しい言葉ですので、私からはこの点を請け負うことはいたしかねます。サバ好きさんも今後、相談者さんから「立場が悪くなることはないということで良いですよね」と訊かれた場合は、「そうです」とお返事することはせず、「その点は弁護士から回答します。」と答えてこちらに流してください。
繰り返しになりますが、権利者側の対応に関する部分は、「これまではこうなっている」という限度の声掛けにすぎません。権利者側も、血の通った人間なので、真摯に対応してもらえていないと感じれば、当然怒れてくることもあります。問題を過少にとらえたり、ステレオタイプに処理することは厳禁であると考えます。そもそも、権利者側としての対応も幾パターンもあることですので、決めつけることはしません。また、そういった発信には慎重にならなければなりません。
あくまで、タイムスタンプと作品名を確認した結果、作品を侵害したという確証までが手元にあるわけではないなら、その状況で同意するのは危険ではないかという話です。
以上を踏まえれば、「立場が悪くなることはない」というのは勇み足の議論です。立場は、悪くなるリスクはゼロではなく、ありますよ。そして、それを大っぴらにいうのは、やや権利者の立場に無頓着すぎるのではないかという印象はあります。
大枠、当職の仕事の流れを覚えていただきつつあるようで、とても頼もしく思います。サバ好きさんは正社員で、今後も長いお付き合いになりますので、時間をかけてで結構ですので、法律の世界特有の、言葉遣いの「気難しさ」にも慣れていっていただければと思います。
前回の記事はこちらです。

