作 成 : 愛知県弁護士会所属弁護士 早河弘毅

11万円上昇!?  ITJ法律事務所の和解基準引き上げについて徹底解説&スタッフの所感

目次

まえがき

弁護士早河弘毅

この記事は、スタッフが書いてくれたものを私がチェックして微調整して公開しているものです。法律家ではないという意味での素人目線でのコンテンツ提供を目的としています。

弁護士早河弘毅

ITJ法律事務所さんの和解金額について、当職が執筆した情報を確認したい方に対しては、以下の記事を勧めます。

弁護士早河弘毅

今回は、入社して間もないパートの方ではありますが、精力的に勉強してくださっている、「あすなる」さんに、踏み込んだ記事を書いていただきました。

弁護士早河弘毅

知識も盛り込んだ内容になっていますが、私が確認して修正はしておりますので、よろしくお願いします。それでは、あすなるさんよろしくお願いします(※さすがにパートの方に顔出しはお願いしていないので、以下は、本人が拾ってきた画像をアイコンにしてお届けします。)。

本記事を読むと分かること

事務員あすなる

早河先生、ご紹介ありがとうございました。私に引き継がせていただきます!

2025年3月31日、弊所のご相談者様の請求者代理人として最大数を誇る「ITJ法律事務所」より、示談基準の引き上げの旨連絡がありました。

このHPをご覧になっている皆様のうち多くの方々が、現在もしくは将来ITJ法律事務所より開示請求等がなされる可能性が高いと考え、最新情報と事務員の立場からのコメントをお伝えさせていただきます!

このページを読むとわかること

・和解基準引き上げ(予告)の
詳細について

・引き上げに対する

弊所スタッフの所感・意見

当記事は、ITJ法律事務所が和解基準引き上げを予告している段階で執筆しているものです。

実際に2025年5月1日以降の和解が実際どのように行われるかは明らかではないため、
「あくまで予告を受けた段階での予想に基づく内容」であることをご了承ください。

事務員あすなる

この記事は、新人事務員のあすなるがお届けいたします!
初スタッフブログで読みにくい点も多々あるかと存じますが、ぜひ最後までお読みいただけたら嬉しいです🙇

経緯

 弊所ご依頼者様の多くが、ITJ法律事務所1を権利者代理人とする示談保留(ログ保存期間待機中2)であることもあり、2025年3月31日、ITJ法律事務所より以下の内容のメールが届きました。

ITJ法律事務所より弊所に届いたメール(一部抜粋)

・これまで、トレントシステムを用いた著作権侵害行為について、個別的な和解(33万円)と包括的な和解(77万円)という2種類の和解案で、和解に応じてきた

・しかし、令和7年5月1日以降に和解する件については、個別的な和解(44万円)、包括的な和解(88万円)というように変更する。

・令和7年4月末日までに和解が成立する件については、従前の和解基準でよい。

 当ブログ執筆時点(2025年4月8日。なお、早河による修正は4月14日に行ったうえで公開しました。)では、ITJ法律事務所よりこの他の連絡は受けておりません。
 なお、弊所ご依頼者様に向けては既に公式LINEより情報共有をさせていただいたものと同一の内容となります。

  1. ITJ法律事務所については、こちらのページ(執筆:弁護士早河)が解説しています。 ↩︎
  2. ログ保存期間待機については、こちらのページ(執筆:弁護士早河)が詳しく解説しています。 ↩︎

引き上げの詳細

 端的に言えば、5月以降和解基準を11万円上げます!という変更告知なのですが、より詳しく見てみましょう。

金額

それぞれの和解条件において、11万円ずつの上昇となるようです。

旧基準(2025年4月末まで)新基準(2025年5月以降)
個別的な和解33万円44万円
+11万円
包括的な和解77万円88万円
+11万円

 ちなみに、それぞれの和解基準の違い(個別・包括の違い)がわからないという方は以下をご参照ください。

それぞれの和解基準の違いについて

 これらの和解類型は、ITJ法律事務所に限らず、多くの権利者代理人法律事務所が用意している和解プランであり、それぞれ以下のような特徴があります。

個別的な和解
包括的な和解
  • 当該情報開示請求によって権利侵害が明らかとなった一作品のみについて和解する。
  • 当該権利者の作品について、当該一作品以外の侵害は一切ないことを誓約する。
  • 上記誓約に反し、他の侵害が発覚した場合は多額の違約金を支払う。
  • 当該権利者(AVメーカーなど)の作品全てについて和解する。 
  • 権利者代理人(ITJ法律事務所など)が同一であっても、権利者が異なれば包括的な和解の効力は及ばない。

 これらの和解類型を目にしたとき、多くの方は「包括的な和解」を選択してしまいがちですが、必ずしもそれが最良の選択肢とは限りません。
 弊所では、ログの保存期間を待機したうえで、どちらの和解を取るか判断することを推奨しております。

時期

 2025年5月より上記の変更との連絡がありましたが、具体的にはどのようなタイミングから変更となるのでしょうか。

”令和7年4月末日までに和解が成立する件については、従前の和解基準となります。”

以上の文言からすれば、和解成立のタイミングが基準日(2025年5月1日)の先後どちらであるかによって、金額が確定するものかと思われます。

言い換えれば、現在以下のような段階にいる方は、基準日以降の、変更された新基準(44万円または88万円)にて和解をすることが原則となる、という趣旨のようです(早河注:概ね間違いとは言えないので残しました。ありがとうございます。)。

・プロバイダから、開示請求の意見照会を受けている方
・ログ保存期間待機のため、交渉保留を申し入れている方

 このような方々も、同意回答をして和解を急ぐことや、交渉保留をせずに即時に和解をすることで、変更前の旧基準(33万円または77万円)にて和解をすること自体は可能です。
 しかし、このように急いで和解を進めることは本当に妥当なのでしょうか。

 これに関する個人的な(事務員の立場としての)意見は、次の章でお伝えいたします。

ITJ法律事務所の動向や考察

 今回の和解基準の変更について、ITJの過去の動向なども見ながら、そのねらいなどについて検討してみましょう。

過去の基準について

 ITJ法律事務所は、トレント事件に関する和解基準として、過去に何度か変更を行っています。
 そこで、以下の通り過去の金額の推移について見てみましょう。

24年3月以前24年3月~25年4月25年5月以降
個別和解22万円33万円
(+11万円)
44万円
(+11万円)
包括和解55万円77万円
(+22万円)
88万円
(+11万円)

 さらに、この画一的な料金体系となる前(令和2(ワ)1573号事件の記録)には、独自の計算方法による億単位の損害額を提示の上、「協議」をしたいとのみ述べ、基準を最初から示すことはしない、という時代もあったようです。

事務員あすなる

金額が大きいと、受け取った人は驚いてしまいますよね。。。

この変更は従来通りのペース

 これらの過去実績を踏まえると、今年の変更はこれまでと同じペースと言えると思います。

スタッフの所感

 ここからは、執筆者の事務員あすなると、事務員ロヨでこの変更について意見を交換した内容についてお届けいたします(早河注:この吹き出し部分については、あすなるさんとロヨさんが実際に二人で打ち合わせして作ったそれぞれのセリフを、当職が14日に修正して公開しました。)。

事務員ロヨ

はじめまして、ロヨです。私も令和6年夏ごろの入社なので、和解基準の変更を実際に目にしたのは初めてです。

事務員ロヨ

どんどん上がっていくと早河先生から聞いて私も驚きました。

事務員ロヨ

毎年上がっていくと、最終的にはすごい金額になりそうですね。

事務員あすなる

早河先生の意見が気になりますが、個人的には、焦らせて示談をするのが目的なのかな、と思うこともあります。

事務員ロヨ

私もそう思う。法律のことは勉強中だけど、
44/88万円は素直に高すぎると思うなー。

事務員あすなる

権利侵害しているとはいえ、本当にとんでもない金額だよね!
変更に目が行ってしまって、焦って払っちゃう人が出てきそうだよね。

事務員ロヨ

そうだよね~。
あえて予告をしていることからすると、そんな気もしちゃいますよね。

事務員あすなる

結局のところ、外部からは、権利者側の意図はわからないというのが、前に早河先生が言っていたことだけど、いろいろ勘ぐってしまいますね~。

事務員ロヨ

そもそも正確な損害額の算出も不可能で、相場も特に決まっているわけじゃないと聞いたことがありますよ。そうすると、和解の金額なんて言ったもん勝ちみたいなところはあるのかなと勝手に思いました。

事務員あすなる

示談に応じる人からは少しだけでも回収できるようにしているのかもしれないね。

事務員ロヨ

確かに!

 実際に、結構盛り上がって話していました(笑)

 このように、事務員同士で話し合ったところ、今回の変更(予告)についてはいろいろな意見が出ました。
 事務員から出た意見をまとめると次のとおりです。

被請求者への圧力が目的なのかな?という意見も出ました。

そもそも和解金の金額の適正性については再考の余地はあるのではないか、という意見も出ました。

裁判手続きを避けたいという内心が見え隠れする気がする、という意見も出ました。

 これらはあくまで事務員の憶測に過ぎませんが、普段からトレント事件に関わっている事務員立場としては、このようにな評価が十分に立つのかなとは思っています!

 ちなみに、これらの評価の元になっているような、早河先生の教え(?)については以下の記事にも表れているかと思いますので、興味があればぜひ読んでみてください!(関連記事の下にも本記事は続きます)

おわりに

 ITJ法律事務所の和解基準引き上げに関して、徹底解説とスタッフの所感でした!!

 変更の予告と聞くと、(増税前の駆け込み需要のように)なんとなく「駆け込みで変更前に支払ってしまいたい!」と思ってしまうかもしれませんが、それをやる前に弁護士に相談すべしです!
 あくまで一事務員の個人的な感想・憶測に過ぎませんが、考え方の一つとして、参考にしていただけましたら幸いです!

 また、私あすなる、スタッフブログを初めて執筆させていただきました。
 速報的な内容があったため、自己紹介に先立って本投稿を作成する運びとなりましたが、近日中に自己紹介投稿も作成する予定です!

事務員あすなる

入所間もない新人事務員ですが、
面談等でお会いできた際には
どうよろしくお願いいたします。
十分な知識量とわかりやすく周到ご案内で、
すこしでも安心していただけるようなご対応に努めます!

最後までお読みいただきまして誠にありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします!!

弁護士早河弘毅

あすなるさん、初めてのご寄稿とは思えないほどの、具体的かつ説得的なスタッフブログをありがとうございました。

弁護士早河弘毅

当サイトの読み手は、意見照会書を受け取っている方がほとんどであることを念頭に置きつつ、読み手の関心にこたえる工夫と親切心に満ちた見事な内容であったと思います。

弁護士早河弘毅

これまで、スタッフブログは「事務員さんの生活の1ページ」を書いていただくものが多かったのですが。

弁護士早河弘毅

今回のように、トレント事件について事務員さんの立場から言及していただくのも、読み手にとって目線が近いので、良かったかなとも思います。

弁護士早河弘毅

主に権利者の立場にも配慮して、一部表現を変えさせていただきました。

弁護士早河弘毅

皆さん、今後も当職ともども、事務のあすなるさんもよろしくお願いします。

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この記事を書いた人

はじめまして!新人事務員のあすなると申します!

まだまだ勉強中のことが多いですが、より相談者様に近い目線で情報を発信していけたらと考えております!

私は、将来的には弁護士を目指している法学部生で、趣味も様々あるので、興味を持っていただければ以下の自己紹介ページをお読みいただけますと幸いです:D
自己紹介ページ→【現在執筆中です】

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