作 成 : 愛知県弁護士会所属弁護士 早河弘毅

弁護士費用の相場は?考え方まで徹底解説【BitTorrent(ビットトレント)系のP2Pソフトウェア(ファイル共有ソフトウェア)利用による著作権侵害】

目次

BitTorrent(ビットトレント)事件の弁護士費用について

 意見照会書が届いた方は、多くの場合、権利者と示談していくことになります。
 権利者に示談金を支払う必要があるのですが、弁護士を立てる場合は、弁護士費用も必要になります。
 出費が重なりますので、少しでも弁護士費用を抑えたいと思うのは自然なことでしょう。
 弁護士費用はいくらが相場なのでしょうか?

弁護士費用はどの程度になるのでしょうか?相場や考え方をご説明します。

最後まで読むと分かること

  • 弁護士費用は自由化されており、弁護士によって全く異なる料金体系を用意していることが分かる。
  • トレント事件は、弁護士によって「すぐに示談」のタイプの弁護士と「ログの保存期間まで待機する」タイプの弁護士がいることが分かる。
  • すぐに示談をする場合は、弁護士がいないとできないことなのか、弁護士費用に見合った稼働をしてもらっているかを慎重に吟味すべきであることが分かる。
  • 「弁護士がどこまで対応してくれるのか」は弁護士費用ではなく「委任事務」としてどこまで合意されているのかで変わるので、説明をちゃんと聞いて契約書も確認すべき。
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本記事が関係する領域
意見書照会受領・回答
示談
訴訟・刑事告訴
弁護士早河弘毅

このランク付けは、読み手の便宜のために、私の判断で行っているものです。ご参考にしてください。

弁護士費用

相場は1社あたり30万円~40万円程度

「相場」の形成について

 トレント事件については、対応している弁護士が(他の分野に比較すると相対的には)まだ多くない状況にあり、「相場」と呼べるものが形成されているのか個人的には疑問です。

相場は1社30~40万円?

 しかしながら、回答書の2週間の期限により心理的に威圧されている相談者の方にとっては、ひとまず「相場」というものを知る必要があることも事実です。
 そこで、リスティング広告を行っている法律事務所の中から、検索表示で上位に出やすい法律事務所を3社ピックアップし、比較を行いました。
 結果、以下を確認する限りでは、30万円から40万円というのが一つのレンジになると思います。繰り返しになりますが、「相場」というものはないと私は考えております。また、公開のホームページ上から分かる情報にも、限度があります。実際にそれぞれの事務所さんに電話をかけて聞いてみるのが良いと思います。

近年、複数の会社・複数の作品について請求がされ、意見照会書が何通も届く事案が発生しています。この場合、弁護士費用は、1社ごとに発生する可能性があります。何社対応しても費用が変わらない事務所もあります(弊所もそうです。)。この点は、無料相談の段階でくどいくらい聞くようにして、確認して言質を取っておきましょう。

 

弁護士法人春田法律事務所

弁護士費用について

 公開されているサイト上に記載がありました。

着手金20万円(税込 220,000円)
和解の成功報酬金20万円(税込 220,000円)

刑事告訴があり刑事事件の対応が必要となったときは、別途に弁護士費用をご相談させていただきます。

トレントのトラブルに強い弁護士 | 春田法律事務所

方針について

 上記のリンクから直接お問い合わせください。 

弁護士法人東京スカイ法律事務所

弁護士費用について

 公開されているサイト上に下記の記載があります。

弁護士費用

原則30万円(税込)

[内訳]
着手金:15万円(税込)
報酬金:15万円(税込)
※事件処理にかかる実費は当事務所が負担します。
※このほかに、相手方への和解金額の支払いが必要です。
相談に複雑な事情がある場合には、費用が増額になる場合があります。

【トレント問題に強い弁護士】著作権侵害で意見照会書が届いた方 – 東京スカイ法律事務所

方針について

 上記のリンクから直接お問い合わせください。

弁護士法人法の里

弁護士費用について

 弁護士法人法の里さんの、公開のサイト上では、損害賠償請求事件は以下の価格であると記載があります。

期間(目安)最短2〜6ヶ月
着手金(税込)110,000円〜
成功報酬(税込)経済的利益の17.6%
トレント問題に強い弁護士|弁護士法人法の里

 意見照会書の代理回答は以下の料金表であると記載があります。

期間(目安)最短1週間
着手金(税込)110,000円〜
成功報酬(税込)成功報酬なし
トレント問題に強い弁護士|弁護士法人法の里

方針について

 上記のリンクから直接お問い合わせください。

何をしてくれるのか?が重要

どの程度の仕事を弁護士がしてくれるのか?が非常に重要です。

費用に見合った仕事をしてくれるのかどうかという観点から選びましょう

 弁護士の行う業務の量・内容は、弁護士との「委任契約」に「委任事務」としてどこまでのことが書いてあるかによります。極端な例で申しますが、弁護士Aが50万円、弁護士Bが30万円で仕事をすると言っていたとしましょう。Aは「委任事務」として、契約書で50万円で行う業務として「1社の交渉」とだけ書いていたとします。Bは、30万円で行う「委任事務」として、何社交渉が来ても全部を対応しますと書いていたとしましょう。

弁護士A

私は50万円で1社の交渉だけをします。

私は30万円で何社から請求あってもご対応します

 この場合、弁護士Aのほうは、弁護士Bより費用は高いのですが、行うのは1社の交渉だけです。費用が高い分、業務の量も多くしてもらわなければ釣り合わないのではないか、と考えるのが自然かもしれませんが、弁護士がどの程度の仕事をするのかは契約で定まっているのです。

ログの保存期間まで交渉を保留にして待機すること

 ログの保存期間まで交渉を保留にして待機することで、和解内容を適切に見極めることが可能です(詳しくは弁護士にお問い合わせください。)。

申立てが行われていないケースでは不開示を狙える

 申立が行われていないケースでは、プロバイダによっては、不開示で自力で書いても不同意にすると担当者が回答した会社もあります。ご不安であれば私にも聞いてください。なお、申立が行われていないケースでは、今のところ当職のもとでは、全件不開示で終了しています。これを、早期示談事務所に依頼して多額の示談金・弁護士費用を積んでしまっていると非常にもったいないです(200万円程度はよくあります。)。是非ご相談ください。

参考記事

一度「同意する」回答をしてしまったケースについても、差し替えて不同意にできることがあります。

参考記事

申立済みパターンについても、基本的には、不同意回答をすべきと思うケースが多いです。

相手方によっては示談金の交渉自体が可能なケースもあります

 後述するITJ法律事務所以外の事務所では交渉が可能なケースもあります。私に聞いていただければお答えします。

応訴対応や債務不存在確認請求訴訟の対応を任せられる

 応訴対応や債務不存在確認請求訴訟の対応は、訴訟マターになるので、弁護士に対応してもらう必要が高いと言えます。

交渉保留中の対応

 長期化すると、相手方法律事務所の中には直接あなたに電話をかけてくるところもあると報告がありますので、交渉を保留にして長期戦をする場合は、不利な言質を取られたり、時効の援用をつぶされることがないように、弁護士を立てるメリットはあると考えます。

小括

 弁護士費用もさることながら、弁護士が何をしてくれるのかという点を、無料相談の時点でよくよく確認するようにしましょう。あなたが自分でやっても簡単にできるようなことで、お金がたくさんかかっていないか、費用が安くても、サービスの内容は不十分ではないのか、きちんと確認したほうが良いです。
 ひいては、自分が何のために弁護士に依頼をするのか、依頼に何のメリットがあるのかを考えた方が良いです。

Q&A

すでにAと契約してしまったが、弁護士Aが50万円で1社の交渉しか引き受けず、弁護士Bが30万円で何社の交渉でも引き受けると述べている、後からBが見つかったので、既に契約しているAに対し、Bよりも費用が高いことを理由に、2社目以降の費用を無償で対応させることはできないか。

できないと私は思います。その場合でも、Aは契約の内容どおりの履行をすれば、債務不履行になることは原則としてありません。

契約の内容どおりの履行をすれば債務不履行になることはないとしても、1社ごとに費用が掛かるのはさすがに高すぎて受け入れられない。あとから来てしまったものについて、無償で対応するようにと交渉するのは難しいか。

あらかじめ2社目以降の金額を掲げていない事務所の場合は、交渉をしてみる価値はあると思いますが、結果、応じないとは思います。契約後に料金を変更する交渉はお互いにとってトラブルになりがちですので、契約前に確認するのがベストなのです。

2社目以降の弁護士費用がかかることがあとから分かった場合(もしくは、契約時にきちんとそこまで話していなかった場合)すでに1社目の費用を払っているが、それを返してもらうことはできないのか。

1社目の示談が成立していると厳しいですが、1社目の示談が成立していない段階であれば、報酬金の支払いを拒むとともに、着手金の返還を求める交渉は可能です。弊所でも、前任法律事務所(着手金15万円、報酬金15万円の事務所でした。)に対し、着手金の半額7万5000円の返還を得た実績があります(報酬金についても支払わずに済みました。)。

早期示談を弁護士に依頼する意味は?

ITJ法律事務所は一切の条件交渉に応じていないという点がポイントです。

早期示談はあなたが自分でできます。

 早期示談をするだけであれば、あなたは相手方法律事務所を確認し、自力で行うことが可能です。とりわけ、相手方法律事務所がITJ法律事務所の場合は、和解を検討している方に向けて、条件交渉には(弁護士をつけても)応じていないこととを以下のサイトで表明しています。さらに、和解をする方に向けてのフォームもあります。

Q: 弁護士に依頼すれば和解金額の減額は可能ですか?
A: 弁護士を通じて交渉であっても、当事務所の依頼者については和解金額の減額等は行っておりません。

トレントの発信者情報開示請求について – 弁護士法人ITJ法律事務所

分割払いを認めさせることについて

 法律事務所の中には、分割払いを交渉によって相手方法律事務所に認めさせたという宣伝をしている事務所があります。どのようなプランを認めさせたのか外側からでは判断ができないため、慎重な検討を要しますが、分割払いについては、たとえばITJ法律事務所は以下のように発信し、本人交渉でも柔軟に応じる姿勢を見せています(実際、私が請求側の弁護士だったとして考えても、分割に応じることで和解金を回収できるなら、基本的に分割には応じると思います。)。

【支払い方法について】

Q: お金がないので、分割で支払いたいです。可能ですか?
A: 可能です。お気軽にご相談ください。

トレントの発信者情報開示請求について – 弁護士法人ITJ法律事務所

 自力で対応をしても分割払いを認めてもらえるならば、分割払いの交渉ができることは、弁護士を選ぶメリットにはならないということになります。

他社からどれだけ請求が来ているかを調査してくれる、という弁護士について

 法律事務所の中には、IPアドレスを匿名で相手方法律事務所に伝えることで、「あと何社請求があるか」を事前に調べてくれるという事務所があります。
 しかしながら、現在一般家庭で普及している動的IPアドレスは、ルーターの電源を切って入れたり、時間が経過するなどによって、同じアクセスポイントのWi-Fiであっても別のIPアドレスが割り当てられることがあります。そのため、IPアドレスで調査をする方法は、誤った侵害通信を検出してしまったり、あなたの侵害通信を逃してしまう可能性があり、和解の基礎となる判断を誤らせるリスクが大きいものです(検出された侵害通信同氏のタイムスタンプが集中している場合は、相対的にリスクは低下するでしょう。)。

刑事告訴や民事訴訟を防ぐことを理由とする弁護士について

 自力で示談をした場合でも、刑事告訴や民事訴訟を防ぐことができます。

 さらに言えば、当職は、刑事告訴や民事訴訟については、現状、ITJ法律事務所は必ずしも積極的に行っていないと考えております。

ITJ法律事務所以外の法律事務所との交渉について

 以上は、公開のサイト上で自社のスタンスを明らかにしているITJ法律事務所についてのご説明ですので、他社については必ずしも当てはまらないことには注意してください。

家族に知られずに解決できるのかについて

 法律事務所が代理人につくことによって、メーカー側の法律事務所は、直接あなたに書面を送ってこなくなります。また、代理人がついていないケースでは、メーカー側の法律事務所は、直接電話をかけてくるケースがあることも最近報告されています。これらから、弁護士はあなたを守ってくれます。
 他方で、プロバイダからの新しい「意見照会書」については、代理人が付いていても、無視して送ってくるケースのほうが多い状態です(なお、今後、しかるべき措置をとる予定です。)。また、「開示通知」についても、プロバイダは契約者宛てに直接送ってこようとします。そうすると、結局家族には発覚してしまうリスクがあります。当職は、家族に内緒にすることは難しいと説明してお受けしています。

Q&A

弁護士を利用する経済的メリットはないということか?

弊所では、クライアントに経済的なメリットをもたらすため、不同意回答の作成、ログ保存期間までの待機による和解内容の見極め、和解の拒否、債務不存在確認訴訟、給付訴訟応訴対応、供託、時効の援用を行っております。

早期に示談をする場合、弁護士の工数はどの程度発生するのか。

相手方法律事務所によりますが、ITJ法律事務所の場合は、条件交渉に応じていないので、基本的にはサインをするだけであると私は考えています。法律事務所によっては、IPアドレス調査を行っていますが、その問題点はすでに上記でお話ししたとおりです。もっとも、早期に示談をすると主張している事務所に直接聞いた方が良いでしょう。

交渉ができなくとも、弁護士から申し入れるルートだと条件が変わることはないのか

ITJ法律事務所の場合はそのようなことはありません。そのように同所が公表しています。

回答書の不同意については弁護士に頼まないと書くことができないのか。

そうではありません。不同意の理由の欄含めて自力で書くことで足りるケースもあります。ただし、トレントを利用しているにもかかわらず利用をしていないという虚偽の回答をすることはおやめください。難しければ、弊所で承っております。

動的IPアドレスについてもう少し説明してくれるサイトはないか

以下のサイトの説明が簡潔で的を得たものです。

固定IPアドレスとは、一度割り振ったIPアドレスを故意に変更しない限り変わらない設定となります。
動的IPアドレスとは、自動でIPアドレスを割り振りするため、いつIPアドレスが変わるか分からない設定となります。

固定IPアドレスと動的IPアドレス

一般家庭の場合、プライベートIPアドレスはDHCPによる動的IPアドレスが主流です。

固定IPアドレスと動的IPアドレス

当職にもぜひご相談ください

 当職のスタンスは、メリットとデメリットを両面お伝えし、依頼人に方針を選んでいただくというものです。回答書には同意しない、開示された場合は、ログの保存期間まで交渉を保留して待機する方針でお受けすることが極めて多くなっていますが、ITJ法律事務所以外のケースでは、条件交渉が奏功したことはあります。また、申立まで行われていないケースでは、大量の請求を不開示のうちに終わらせることも可能です。
 ご不明な点がございましたら遠慮なくお問い合わせください。何卒宜しくお願い致します。

気軽にお問い合わせください。お待ちしております。
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この記事を書いた人

愛知県弁護士会所属弁護士(登録番号は60208)。
大学入学後半年間の学習で1年生の秋に行政書士合格。
愛知大学法学部卒。名古屋大学法科大学院卒。
弁護士登録後2年10か月で早期独立開業し、令和5年9月1日に「早河弘毅法律事務所」を創設。
創設後、持ち前の労働事件、刑事事件、インターネット事件の処理を中心に売り上げを堅調に伸ばし、令和6年4月に法人化、「弁護士法人早河弘毅法律事務所」の所長となる。
1991年12月23日生まれ。
依頼人に寄り添う弁護士、不安からお守りできる弁護士になりたいと思っているが、それは基礎となる法的素養が盤石であることが前提であって、単なる巧言令色を意味しない。早いレスポンスと丁寧な説明が売り。

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