複数の作品・メーカーからの請求の対処法は、トレント利用中止日からログの保存期間が切れるまで+αの期間、示談を保留にすることです。
「複数の作品・メーカーから請求される可能性」の論点について
プロバイダから発信者情報開示にかかる意見照会書が届き、あなたは何を思ったでしょうか。まず、何のことだか分からないと思ったのではないのでしょうか。数ページ程度の意見照会書を読んでいくと、アダルトビデオのタイトルがあります。トレントを利用したと書かれています。ここまで読んでいくと、何のことかやっと理解できたという方もいるでしょう。タイトルに見覚えのある方もいれば、そうではないという方もいます。
よほど心臓の強い人でもない限り、これを無視して平気でいられるというものでもありません。インターネットで調べることになります。
そして調べていくと、示談金を支払うべき場合がある、という説明を目にすることでしょう。その金額も決して安いものではありません。
何より、複数の作品・複数の会社から、今後意見照会書が届く可能性があるという記事を見ることもあるでしょう。1社の対応でも十分負担になっているのに、複数社から請求されるということはどういうことなのでしょうか。そのようなことが本当にあるのでしょうか。
本記事では、相談者から質問が寄せられることが最も多い点である、複数社からの請求について解説していきます。
本記事が、あなたの助けになれば僕としては嬉しいです。読んでも分からなかったら、ライン友達を利用して気軽に聞いてください。より踏み込んだ情報を提供することも可能です。
結論から言えば、トレント利用で、複数のメーカーから複数の作品で発信者情報開示にかかる意見照会書が届く可能性はあります。
まだ、1通目が手元に来たばかりの方にとっては、実感の湧かない内容でしょう。しかしながら、心して聞いてください。
複数のメーカー・複数の作品の件で発信者情報開示にかかる意見照会書が届くプロセス
まず、発信者情報開示にかかる意見照会書が届くまでのプロセスは以下のとおりです。
AVメーカー等の権利会社側が、トレントの件を法律事務所に依頼します。
法律事務所が、問題となっている作品を違法アップロードしている者のIPアドレスを記録した資料を作成します。ここで、法律事務所は膨大な数のIPアドレスを記録することになります。
法律事務所が発信者情報開示命令を東京地裁又は大阪地裁に申立てます。
申立の相手方であるプロバイダが、契約者に対し、発信者情報開示請求に応じてよいか否かの意見を確認するため、発信者情報開示にかかる意見照会書を送ります。
以上の流れです。
上記のプロセスによって、複数回、該当者のIPアドレス・タイムスタンプが検出された場合、意見照会書が複数回にわたって送られることがあります。
また、複数の作品・メーカーについて、同時に意見照会書が届くこともあります。
AVメーカー等の権利会社側は、複数意見照会書が届いている人と、そうでない人を、IP検出作業の時点でカテゴリ分けしているわけではありません。
ですので、「1通届くと、そこから集中攻撃され、何通も届く」とか、「届くのは1通までにしているケースが多い」といったことはありません。実際に申立書を見ると分かりますが、検出したIPを目録という表にして、機械的かつ大量に請求を行っています。
複数のメーカー・複数の作品の件で発信者情報開示にかかる意見照会書が届く方の傾向について
実際にご相談をお受けしての感触です。
私の考える、「複数のメーカー・複数の作品で発信者情報開示にかかる意見照会書が届く」ことの多い方の傾向としては、やはり、「ご相談の段階で、複数社請求のことを大変気にされている方」です。もちろん、この点が気にならないという方はほとんどお見えにはなりません。しかしながら、「大変」気にされるということは、やはりトレントの利用も、実際のところ、相当な程度にのぼっていたということでしょう。本人の悪い予感が的中する形で、複数社請求が来ている傾向にあると思います。
もっとも、これはあくまで私から見えている限度でのお話です。また、あくまで傾向です。すべての方に共通するというわけではありません。例外的な方もお見えになります。
複数のメーカー・複数の作品の件で、トレント利用について発信者情報開示にかかる意見照会書が来ることへの、対処法
複数のメーカー・複数の作品の件で、トレント利用について発信者情報開示にかかる意見照会書が来た場合どうなるのか
結論から申し上げますと、発信者情報開示請求が認められた作品・メーカーについては、あなたの身元が開示されますので、AVメーカー等の権利会社側から請求が来ます。
この請求を無視すると、民事訴訟・刑事告訴の可能性があり、リスキーですので、対応をせざるを得ません。
示談をすれば、このメーカーのこの作品については民事訴訟・刑事告訴を免れることはできますが、単一作品について和解するだけでも33~50万円。複数作品について和解をしようと思うのであれば77万円を支払う必要があります。
急いで示談をしないほうが良いという点について
かつては、意見照会書は1通で終わるケースも少なくありませんでした。このような状況からすると、早期に示談をして、安心を得る方法が優れているとも言い得ます。
しかしながら、現在では、一人の方に何通も意見照会書が届き、複数のメーカー・複数の作品の件で示談を迫られるケースも増えてまいりました。
このような状況を踏まえると、早々に示談をすることで、後から他のメーカー・他の作品の件で請求を受けてしまい、思わぬ被害を被るケースもあると言わざるを得ません。
また、他社から請求があるかもしれない中で、目に見えている範囲だけを示談しても、結局のところ、真の意味での安心は得られないということです。
請求側のメーカーの総数、示談金の総額は、すぐには分からない。
まず、発信者情報開示にかかる意見照会書を受領して間もない時点では、今後どのような会社から何通の意見照会書が届くのか、示談金の総額がいくらになるのかを知ることは極めて難しい状態にあります。
IPアドレスを使って調べる方法があると思うかもしれませんが、現在、主流となっている動的IPアドレスの場合は、接続した時間が異なればIPが異なる可能性があります。
なお、これとは異なり、法人などでいわゆる固定のIPアドレスを利用している場合には、AVメーカー等の権利会社側に確認をすることで、他作品・他メーカーの侵害状況が判明する場合もあります。この場合でも、プロバイダに聞いて教えてもらうことはできません。
ログの保存期間が切れるまで待機する方法について
ユーザーのアクセス記録を「ログ」または「アクセスログ」といいます。このログは、ユーザーのアクセスのたびに記録されるもので、内容は膨大です。このログが増え続けると、サーバーの容量を圧迫するため、定期的に削除し、容量を節約する必要があります。このように、ログを定期的に削除するまでのスパンを、トレントだけでなく発信者情報開示開示請求の界隈では「ログの保存期間」という言葉を使って表しています。
早い話、ログの保存期間が切れてしまうまで待つことができれば、それ以降は、発信者情報開示命令申立がされたとしても、プロバイダは発信者情報を開示することが技術的にできないため、プロバイダはその旨の回答をすれば足りるということになります(=発信者情報は開示されることなく、手続きが終了します。)。