1社77万円かかる?!トレント事件の示談金の相場を解説
意見照会書が届いてしまったあなたへ。意見照会書には示談をしなさいとは書いていません。しかしながら、意見照会書を読み進めていくと、あなたが著作権を侵害したと書いてあるはずです。トレントを利用し、違法アップロードをして、著作権を侵害したと書いてあるはずです。
もし、あなたが、違法アップロードをしてしまったのなら、民事上の責任と刑事上の責任を負うことになります。これを手当てするために、示談をするという発想が生まれてくるのです。
示談をするべきなのでしょうか。示談をするときのコストはどのようなものになるのでしょうか。この記事で触れていきます。
最後まで読むと分かること
- 示談をするときの相場が現在77万円または33万円であることがわかる。
- 77万円又は33万円という基準そのものは交渉して減額を行うことは難しいことが分かる(弁護士をつけても同じ)。
- 他社からの請求の存否・内容を判断するためにログの保存期間までは待機する必要があることが分かる
このランク付けは、読み手の便宜のために、私の判断で行っているものです。ご参考にしてください。
77万円又は33万円と言われる理由について
示談金の相場を私が解説していきます。ご不安な思いの中、相場を気にかけるのは当然のことですので、なるべく丁寧にご説明します。
意見照会書が届いたら示談をした方が良いと言われることがあります。示談は、刑事責任と民事責任双方に対応できます。しかし、そもそも示談をすべきであるのかどうか慎重な検討を要します。一緒に見ていきましょう。
示談金に加えて、弁護士を依頼する場合は弁護士費用が必要になります。弁護士費用についての考え方は以下の記事をご参考にしてください。
77万円又は33万円は、包括和解又は個別和解の違い
ITJ法律事務所は、1作品のみの和解であれば33万円、複数の作品すべてについての和解であれば77万円という和解提案を一律行っています。
示談をする必要があるのかどうか?という問題について
結論から申し上げれば、示談をする必要があるのかどうかはケースバイケースです。損害額の多寡にもよります。民事訴訟を起こされた場合に、どの程度の損害額が認められる見込みがあるのか、という点が重要です。
トレントの示談金の金額は、AVなどの作品について、複数侵害しているどうか、個別合意をするか、包括合意をするかで異なる。
作品数によって金額が異なってくる点、押さえておきましょう
示談は、著作権侵害について和解をするために支払う金銭であり、作品ごとに和解をします。
そのため、例えばA社のA1という作品を違法アップロードしてしまったとします。
そのあと、A2という作品をもともと侵害していたことが後から分かった、という事案では、もともとが「A1だけ示談します」という内容の示談だった場合、これを本ページでは個別和解といいますが、理屈上、A2作品については、後から別で請求される可能性が残ります。
個別合意は30~50万円程度で示談できるケースが現時点(令和6年10月18日時点)ではあり、金額が抑えられる傾向がありますが、このようなリスクがあるわけです。
そこで、「後から別の作品について著作権侵害が分かったとしても、その作品についても請求はしない」という内容の合意がされます。これを本サイトでは「包括和解」といいます。
この包括合意をするために、77万円の示談金が必要になります。
示談金はどのようにして決まる?交渉はできるのか?
私の経験上、交渉ができるケースとできないケースがあります。相手方法律事務所のカラーも大きいです。お金のことですので、基本的には交渉に取り組む価値はありますが、見込み薄の場合はあらかじめそう伝えざるを円ません。
そもそも、示談金の「相場」というのは法的な用語ではありません。この金額で和解をしてください、という法的な基準があるわけではありません。
当事者が決める和解ラインについて、法律は、基本的にはノータッチです(公序良俗などの規定はあります。)。
交渉をして、両者が最終的にどのような金額で納得できるのか、という議論です。
これは、意見照会を受け取ったあなたの立場からすれば、①示談金を払って、訴訟リスクと刑事事件化リスクを回避する。②訴訟リスクと刑事事件化リスクを受け入れる代わりに示談金の金銭負担を免れるという2つの選択のいずれを良しとするかという問題です。
他方、著作権を侵害されたと主張している権利者の側からすれば、①示談金を受け取って訴訟と刑事告訴は断念する。②示談を蹴って訴訟と訴訟告知の準備を進める、という2つの選択のいずれを良しとするかです。
実際には、同種案件を大量に扱っている権利者側会社のほうで、(あくまで自社のスタンスとしてですが)、和解の基準を一定程度決めており、交渉には応じないこともあります。
示談金は昔と比べて変わった?上昇傾向にある?
結論から言うと、私が担当している事件で、和解基準額が50万円→77万円に変わったことがあり、焦ったことがあります。
和解は当事者のギブアンドテイクですので、権利者側会社が、会社として、「もう少し和解金をあげても、発信者は和解をしてくれるし、その方が金銭を回収できて自社として得だ」と思うのであれば、和解金を上げることは選択としてあり得ます。
このような選択をすることには、権利者側会社としては、リスクもあります。
和解金が上がってしまうと、発信者の中には、「どうせ払えないから黙殺しよう」「訴訟と刑事告訴をされる可能性があるとしても、されるとは限らないし、された場合には受けて立とう」という判断をする人たちが出てきます。
権利者側会社としては、このようなリスクにも目くばせしながら、和解金の基準を決めていますし、場合によっては、個別のケースで譲歩しています。
トレント利用による著作権侵害の示談金の相場なら、弁護士早河弘毅にぜひご相談ください。
「相場」は絶対ではありませんが、それでもプロバイダから意見照会書を受け取ってしまった人が、最初に覚悟を固める数字ではあります。「相場」は、実際にこの類型の事件を経験した弁護士でなければ、肌感覚がなく、分からないこともあります。
ぜひ、早河弘毅にご相談ください。トレント事件については経験をさらに積みたいので、ご相談は大歓迎です。