愛知県弁護士会所属弁護士:早河弘毅

【動画付き】トレント事件の即示談契約について【開示請求の意見照会書が届いた方向け】

目次

ご案内

概 要

 いわゆる即示談契約について、踏み込んだ内容の記事を作成しました。
 なお、動画にもあるとおり、当職としては即示談契約の最大の問題点は、①意見照会書受領直後の発信者の窮状を理解しつつ、②多数案件を処理し正確な見通しを持っている弁護士が③自力で示談をすること比較的容易であることを告げず④「解決」という標語の広告を出稿し⑤複数請求の可能性の存在を告げないまま⑥発信者の期待する「解決」とは程遠い即示談を行うという点にあると考えております。

 示談を代行している場合でも、上記の点について十分に説明を行い、依頼人が理解納得の上で示談をしている場合には、委任契約として何ら問題はないと考えております。そして、かかる説明がなされているかどうかは、この種のサービスを提供している弁護士においても、個別のケースによって異なるということもあると思います。

不安に感じたら

 ですので、不安に思ったら、まずは、現在相談中・依頼中の弁護士と話し合われることを強くお勧めします(この動画のリンクを送っても大丈夫です。建設的な議論になると思います。)。

おことわり

 個々の即示談契約における説明の欠如を問題としております。当職にお問い合わせをされたとしても、どの事務所がそういった契約をしているといったご質問にはお答えできません。

 これまで即示談契約を行ってきた先生であっても、この動画を踏まえて今後適切な説明を徹底される可能性があり、その場合には、本動画の批判はあたらないように思います。

動画本体

こちらからご覧になれます。このページの下部に、動画で使用しているHTMLも掲載します。

資料

トレント事件における即示談契約の問題点

教育用プレゼンテーション資料

1 本動画で問題とした即示談契約とは
  • 大量にトレント事件を扱っている弁護士が
  • 相談者が自力でも示談ができることを伝えず
  • (1社を除き)自力で示談する場合と同じ結果になることを伝えず
  • 示談のみを行う契約をいう
2 トレント事件の特性
  • 複数の意見照会書が来る可能性があり、すべて示談をすると膨大な示談金になる可能性がある
  • 請求側が初手で示談を申し入れてくる
  • 交渉は1社を除き出来ず、当該1社も和解ラインは決まっている
3 即示談契約の広告
⚠️ 広告における問題点
  • 「解決」という言葉で過大な期待を抱かせている
  • 一社のみ示談をする方法は「解決」とはいえないが、その点を説明しない
  • 「家族にばれずに」は多くの場合できない
4 即示談契約における相談者
📌 相談者の心理状態
  • 相談者は、今すぐに「解決」をしてもらいたい
  • 意見照会書を受け取ってパニック状態なので正常な判断ができない
  • 「解決」という言葉に非常に強い期待を抱く
  • 弁護士が「解決」できると言ってくれれば、それ以上は調べないこともある
  • 他にも意見照会書が届くことは調べないと分からない
  • 「解決」すると言って示談をしてもらったのに別の意見照会書が届くと衝撃を受ける(セカンドオピニオンで弊所に問い合わせされることもある。)
5 即示談契約における法律相談
⚠️ 法律相談の実態
  • ラインの短いやり取りのみで契約する場合がほとんど
  • すぐに契約できることはパニック状態の相談者にとって好ましいものであり、契約をする
  • 他社から追撃がありうることは説明していない
  • 自力でも示談できることは説明していない(むしろ、「示談で解決をさせます」「多くの実績があります」など、主導権を握って示談をするというニュアンスの説明をする。)
  • (1社を除き)自力で示談をしても同じ結果になることは説明していない
  • 民事訴訟・刑事告訴のリスクを強調するが、どの程度それらの件数が存在するかについては触れない(「存在します。」とのみ述べる。)
6 補足
法的・倫理的考察
  • 弁護士は経済的メリットのない契約でも依頼者の合意の元受任することはできる
  • 依頼者は心理的なメリットを重視して、弁護士に依頼をすることがあり、それ自体は取引として認められる
  • しかし、即示談契約においては、弁護士側は、多数の事件を処理しており、相談者の窮状を理解していながら、必要な説明を行わず、解決をするとのみ説明して受任をしているケースがあり、依頼人に経済的メリットのない契約をそれと気づかせることなく締結しており、問題がある

📺 今後動画で扱いたいテーマ

  • 即示談契約の着手金返金請求
  • 権利者から見た即示談契約
  • 即示談契約の今後
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この記事を書いた人

愛知県弁護士会所属弁護士(登録番号は60208)。
大学入学後半年間の学習で1年生の秋に行政書士合格。
愛知大学法学部卒。名古屋大学法科大学院卒。
弁護士登録後2年10か月で早期独立開業し、令和5年9月1日に「早河弘毅法律事務所」を創設。
創設後、持ち前の労働事件、刑事事件、インターネット事件の処理を中心に売り上げを堅調に伸ばし、令和6年4月に法人化、「弁護士法人早河弘毅法律事務所」の所長となる。
1991年12月23日生まれ。
依頼人に寄り添う弁護士、不安からお守りできる弁護士になりたいと思っているが、それは基礎となる法的素養が盤石であることが前提であって、単なる巧言令色を意味しない。早いレスポンスと丁寧な説明が売り。

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