知らないと場合によっては数百万円の損失!トレントの「裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)」について徹底解説します。
「裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)」と「申立済みパターン」を区別しよう
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)とは???
申立済みパターンでは、AVメーカー等の権利会社側から裁判所に対し申立書が送られています。
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)ではAVメーカー等の権利会社側は、プロバイダに手紙を出しているだけです。
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます。)の5条1項によると、トレントの利用によって違法アップロードされた作品の著作権侵害を主張するAVメーカー等の権利会社側は、プロバイダに対し、発信者の情報の開示を請求することができます。
もちろん、AVメーカー等の権利会社側は、この請求を発信者情報開示命令申立(同法8条)の形で行うこともできるのですが、裁判所を利用せず、プロバイダにお手紙を出す方法で請求することができます。
このお手紙は、一般社団法人テレコムサービス協会の書式(いわゆる「テレサ書式」)で作成することから、このお手紙そのものを「テレサ書式」とか「テレサ」と呼ぶことがあります。
早いお話、このテレサが来ているだけの段階ですと、同意しない回答をすれば、多くの場合開示されることはないため、結果、示談をする必要はないのです。
しかしながら、このことを知らずに示談をしてしまっているケースをよくお見かけします(手元にファイルがなく、違法アップロードをした確証がないのであれば、もったいないと思います。)。
重要なのは、発信者情報開示にかかる意見照会書のタイムスタンプと作品名を確認し、自らが当該侵害通信を行ったかを確認することであります。それを前提に同意するか同意しない回答(不同意回答・開示拒否回答)を行うかを決める必要があります。
個々のケースを検討せず漫然と示談してしまうと・・・・
法律事務所の中には、そもそもこの裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)とそれ以外(申立済みパターン)を区別せず、漫然と示談している事務所も少なくありません。区別をしたうえで、あえて開示すべきと判断しているのでしょうか。そもそも両者の区別ができていないのであれば、申し訳ありませんが、その弁護士はトレント事件を扱う弁護士としては、正直いかがなものかと思ってしまいます。依頼人の利益を何だと思っているのでしょうか。プロバイダの担当者に電話をかければ、同意しない回答で足りるとアドバイスされるケースもあります。しかし、早期示談をするタイプ事務所は、「同意する」回答をするにとどまらず、個人情報をわざわざ教えにいって、示談をしてしまうというスキームを採用していますので、結局AVメーカー等の権利会社側はその情報をもとに示談にこぎつけることができます。
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)の場合は、示談をするとなると示談金が多額になる傾向がある。
何より、テレサ書式のパターンは、申立を行うより請求側の工数が少ないため、多数の作品・メーカーが請求されやすい傾向にあります。すなわち、示談をするとなると多額の示談金・そして弁護士費用が掛かります。しかしながら、これに対しては、不同意回答で対処できることが少なくないのです(もちろん、トレントを利用しているにもかかわらず、トレントを利用していないと回答するなど、虚偽の回答をすることは禁物です。)。
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)と申立済みパターンを区別するには
プロバイダごとの傾向
ソフトバンク株式会社のような、大手でログの保存期間の長いところは申立済みパターンになりがちで、マイナーな地方のプロバイダは、ログの保存期間が短いこともあって、裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)が主流です。
申立済みパターンの場合は申立書が付属しているケースもある
ただし、中部テレコミュニケーション株式会社(ctc)のように、申立済みパターンであっても、申立書をつけていないケースもあります。その場合は次の方法で確かめましょう。
申立済みパターンの場合は、「東京地裁に申立てがあった」と意見照会書の最初のほうに記載がある。
この記載がある場合は確実に申立済みパターンです。
「甲号証」がありますと書いてある
甲号証というのは、申立済みパターンにおける申立人側の証拠のことです。
添付の書類の右上に「資料」と書いてある。
確実ではありませんが、申立済みパターンの場合は、資料ではなく甲号証なので、資料と書いてある場合裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)のこともあります。
テレサ書式が同梱されている。
AVメーカー等の権利会社側の法律事務所からプロバイダに宛てている手紙が付属していることがあります。この場合は、裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)で間違いありません。
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)の場合に同意しない回答(不同意回答・開示拒否回答)をするとどうなる?
現状、当職の担当事件で、開示されたケースはなく、その後申立てを起こされてもいません。
結論から申し上げますと、実績ベースでは、今日まで、当職が担当した案件で、このパターンで開示されたケースはなく、その後発信者情報開示命令申立がなされてもいない状況です。
通信の秘密を守るべきプロバイダの立場からすると、同意しない回答が返ってきているのに、裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)で開示の決定をすることは困難な状況であります。
その後の開示命令申立についてですが、私の手元の案件で、申立がされたケースはありません。加えて、プロバイダの担当者に確認をしましたが、ほとんどのケースで、テレサの後に申立てが来ることはないそうです(過去にはあったので皆無とは言い切れないそうですが。)。なお、これらはいずれも実績ベースのお話ですので、今後変動する可能性があることは申し添えます。
万一開示された場合は?同意した場合より立場は悪くなるのでは。
裁判外手続きパターン(テレサ書式パターン)で不同意→開示の経験がないので不明ですが、申立済みパターンでは、現状、デメリットは確認されておりません。以下の記事をご参考にしてください。
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弁護士に頼まなくても自力で出せば足りるのか?
結論から申し上げますと、自力で出す場合でも、仮に私がプロバイダの弁護士であれば、不同意で返ってきているのに開示することには慎重になります。
ただ、それが絶対というわけでもないこと、同意しない回答(不同意回答・開示拒否回答)であっても虚偽を述べることは許されない一方で、プロバイダ責任制限法に基づき不同意の場合は理由を書く必要があることから、ご不安であればご依頼ください。ご相談もお待ちしております。